ナノエマルジョン燃料技術

エマルジョン燃料は既存の石油(重油、軽油、灯油等)に10~30%の水を混ぜたもので、エンジン、ボイラー等の内燃機関に使用し、燃費改善による燃料消費量の削減(COの削減)やNO、PM、スモーク等の削減効果が期待できる新燃料です。
40年以上も前から米国をはじめ国内においても数多く検討されてきました。また米国、ヨーロッパでは2000年頃から新燃料として製品化され、減税措置や補助金等の支援で政府も力を入れてきましたが、未だに定着していないのが現状です。

■ ナノエマルジョン燃料の開発

当社では、エマルジョン燃料の長い歴史を踏まえ、期待されながらも実用化されない問題点を調査し、5年程前からエマルジョン燃料ならぬナノエマルジョン燃料の開発をしてきました。その結果、従来のエマルジョン燃料の問題点を見事に克服し、エンジン、工業炉等で消費燃料削減によるコスト削減、CO2削減、NOX削減等を可能としました。当社のエマルジョン燃料は新世代の新燃料であり従来のエマルジョン燃料とは一線を画するものです。

ナノエマルジョン燃料の効果

 

■ 従来のエマルジョン燃料

エマルジョン燃料とは、主として重油、軽油、灯油等の燃料に水を添加したもので、一般的には油中に水が分散したものを言います。また、油種によっては適宜添加剤を必要とします。

エマルジョン燃料

【 油種による違い 】
油種

軽油 A重油 灯油
再生重油

バンカー油 C重油
コールタール
植物油(次世代燃料)
界面活性剤の要否 不要
使用分野 自動車、ボイラー、
中・小型発電機、
BR、中・小型船舶
大型船舶、
中・大型発電機、
大型ボイラー
発電機、船舶エンジン等
で使用予定
粘度 低い 高い 高い
使用温度 常温 高温(90~140℃) 常温~高温

 ※BR:Burning Reactor 工業炉などで使用される工業用バーナー

【 エマルジョン燃料のメカニズム 】

エマルジョン燃料が、エンジンや燃焼炉に液体として噴霧されると、高温に曝されることにより、低沸点の水が気化し1700倍に体積が膨張する為、その時点でまだ液体である周囲の油が飛散します。その際、油が微粒化される為、表面積が増大し、酸素(空気)との接触が効率よく行われ燃焼効率、燃費が向上します。より完全燃焼に近づくため、PMやスモークも激減し、排ガスの削減につながります。

作用

効果

1: Micro explosion

水と油の沸点の違いにより、先行して水が膨張(体積で約1700倍)・爆発。これに伴って油粒子が微細化、強制的な空気との混合が行われ、効率よい完全燃焼が可能。
EMFメカニズム

▼燃費
▼CO2削減

2:冷却

通常、高温下に空気がさらされることでNOxが発生。水蒸気により反応域が希釈、冷却されNOxが削減。

▼NOx削減

3:
噴霧運動量増加

加水により質量(水の比重:大)・粒子数が増える為、運動量が大きくなり空気との混合が改善。

▼燃費
▼CO2削減

4:水性ガス反応

空気と接触、反応しきれない炭素が水と反応し不完全燃焼を補う。
C+H2O=CO+H2-131kj
CO+1/2O2=CO2+283kj

▼燃費
▼CO2削減
▼NOx削減

また、エンジンにおいては水の潜熱によりシリンダ内部の温度が低下し、空気中の窒素が酸化されるのが抑制されNOxの発生が低下します。燃焼炉においては炭素が水中の酸素を利用して酸化する、いわゆる水性ガス反応により、外部からの空気量を大幅に抑えることできます。その為、炉内が冷やされることなく熱効率が改善されます。

このように、エマルジョン燃料は理論上しっかりした燃料削減効果と排ガス削減効果があります。それ故に40年も前から、大手企業をはじめ多くの研究者が開発を手掛けてきました。

■ 従来のエマルジョン燃料の問題点

従来のエマルジョン燃料の問題点は大きく2点が挙げられます。

① 燃料削減効果が不十分

従来のエマルジョン燃料の燃費削減効果はよくて数%程度以下とあまり高くありません。これ
は水蒸気爆発、水性ガス反応が不十分なためと考えられます。特に海運業界では大型船舶等で
使用されるバンカー油エマルジョンにおいて、燃費が悪くなるとの報告がなされています。

② 添加剤等によるコスト高

C重油エマルジョン燃料等の一部を除き、乳化安定性を維持するための添加剤(界面活性剤)が必要となります。従来のエマルジョン燃料では3~10%の添加剤が必要で、エマルジョン燃料は水を10~30%も入れているにも拘らず元の燃料よりも高いものとなります。すなわち従来のエマルジョン燃料は、高くても排ガス対策用にという目的でしか使用できませんでした。

従来のエマルジョン燃料はコスト削減効果はなく、
環境(排ガス)対策としてのみ、特に欧州・米国(国の補助金あり)にて実用化されているに留まる。

【 弊社のナノエマルジョン燃料への取り組み 】

取り組み

■ ナノエマルジョン燃料

【 エマルジョン燃料とナノエマルジョン燃料の比較 】

エマルジョン燃料と当社のナノエマルジョン燃料の大きな違いはその水粒子の粒径にあります。従来のエマルジョン燃料の水粒子径は約10μm に対し、ナノエマルジョン燃料は 300nm 程度しかありません。その為、同じ加水率のエマルジョン燃料であっても、ナノエマルジョン燃料は従来のエマルジョン燃料より、水粒子の個数にして 37,000倍、表面積で 33倍にもなります。その為、水と油の界面が激増しエマルジョン燃料の効果が増大します。

従来のエマルジョン燃料との比較

また、水粒子の粒径が小さくなることは、エマルジョン燃料の安定性を大幅に改善することになります。水と油の分離において一番大きな要因は両者の比重(密度)差により、比重の大きな水が沈降し、凝集、更には合一することによります。この時の水の沈降速度はいわゆるストークスの法則に従う為、水の粒子径の二乗に比例します。すなわち、水の粒子径が 1/33 ということはその沈降速度は 1/1000 になるということです。

エマルジョン燃料の水粒子の粒径を小さくし均一に分散させることで、
燃焼効率の改善、大幅な燃費削減が可能になりました。